OSI、Microsoftの2つのシェアード・ソース・ライセンスを承認

 オープンソース・ソフトウェアの定義を決める非営利団体OSI(Open Source Initiative)は10月16日、プロプライエタリなソースコードを共有可能にする米国Microsoftの2つのライセンスを承認した。だが、このことは、かたくななオープンソース支持派の間に反感を招き、激しい議論を呼びそうだ。

 今回の承認により、Microsoftのいわゆる「シェアード・ソース」ライセンスのうち、「MPL(Microsoft Public License)」と「MRL(Microsoft Reciprocal License)」の2つのライセンスが、「GNU General Public License」や「Mozilla Public License」といった、すでに普及しているコミュニティ・ライセンスと並び、オープンソース・コードを配布するための正式なOSIライセンスとなった。

 MicrosoftのWindowsサーバ・マーケティング/プラットフォーム戦略担当ゼネラル・マネジャー、ビル・ヒルフ氏は記者発表会で、「OSIから承認を得られたのは、Microsoftがこれまでオープンソースに関して多くのことを学んできた成果であり、今後もオープンソース・コミュニティに積極的にかかわっていきたい」と語っている。

 Microsoftは、オレゴン州ポートランドで開催されたコンファレンス「O’Reilly Open Source Convention 2007」(7月23日~27日)で、同社の「シェアード・ソース・イニシアティブ」からOSIにソフトウェア・ライセンスを提出していた。一部にはもっと早くからオープンソース・コミュニティに協力すべきだったとする批判の声もあったが、このニュースは当時、オープンソース・コミュニティの上層部からおおむね好意的に受け取られた。

 MPLはシェアード・ソース・ライセンスのうち最も制限が緩いライセンスであり、ライセンシーは商用/非商用を問わず、ソースコードを自由に閲覧、変更、再配布できる。また、ライセンシーは第三者と共有するソースコードを加工し、開発したソフトウェアにライセンス料を設定することも可能だ。一方、MRLには、ライセンシーがオリジナル・コードとMRLのライセンス・コードを組み合わせる場合、一定の条件が課せられる。

 OSIの代表を務める米国Red Hatのオープンソース担当バイスプレジデント、マイケル・ティーマン氏は、「オープンソース・コミュニティの中には、これまでオープンソースに抵抗してきたベンダーのライセンスをOSIが受け入れることに難色を示す者もいたが、ライセンスの内容を見るかぎり承認せざるをえなかった」と語っている。「2つのライセンスを承認プロセスにかけたところ、オープンソースの定義をきちんと満たしていた」(同氏)

 Microsoftはライセンスの承認作業を進める間、終始協力的な姿勢を見せ、特別な処遇を要求することもなかった。しかし、同社のライセンスを実際に承認する段階に至っては、OSIはコミュニティ・メンバーから送られてきた400通ものメールに対応しなければならなかったという。

 また、OSIの元には、MPLとMRLの承認を不服とするオープンソース支持者から早くも非難の声が殺到しているそうだ。「ここ1時間だけでも、『OSIの連中はMicrosoftの人質に成り下がった。悪魔と取り引きしてしまった』といった内容のメールが3通も届いている」(ティーマン氏)

 だが、OSIはMicrosoftからのライセンス提出に公平かつ公正でなければならない、というのがティーマン氏の信念であり、同氏は以下のように語っている。「もし、ある会員制クラブが、シカゴにクラブへの入会資格を満たす人間が2人いるのに、『当クラブではシカゴからのメンバーは受け付けておりません』と断ったらどうなるか。OSIは設立当初から公平かつ誠実であることを理念としているが、どういうやり方をしても不公平に感じる人はいるのだ」

 Microsoftは以前に比べれば、かなりオープンソース・コミュニティに協力的な姿勢を見せている。最近では同社のオープンソース・イニシアティブについてコミュニティ全体を教育したり、同社のプロプライエタリな技術がオープンソース・ソフトウェアとどのように連携するかを実証したりするために、専用のWebサイトを立ち上げているほどだ。ところが、その一方で、Linuxなどのオープンソース・ソフトウェアにMicrosoftの知的財産が大量に利用されていると主張し、そうしたソフトウェアに特許使用料を徴収すると脅しをかけている事実もある。こうした主張は、Microsoft製品からオープンソース・ソフトウェアに乗り換えを検討している顧客に、恐怖心や不安感を煽る策略だと見られている。

 ティーマン氏は、Microsoft以外の企業がMPLやMRLの下でコードをライセンス供与するかどうかについては、まだわからないと述べている。ただし、オープンソース支持派が懸念するように、もしMicrosoftがOSIの承認を受けたライセンスの下、ソフトウェアに特許付きの技術を埋め込んで、それを“オープンソースと呼ぶ”つもりなら、その考えは止めたほうがよい、と同氏は警告する。

 「ロイヤリティ付きのオープンソース・コードを生成できるかどうか試そうと思っているのなら、Microsoftに対する敵対心は400通のメールどころではすまないことを肝に銘じておくべきだ」(同氏)

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Serviceニューヨーク支局)

Microsoft
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提供:Computerworld.jp