Linuxカーネル管理者がGPLv3を問題視――カーネル変更が困難になることを危惧、「カーネル変更には所有権者全員の許可が必要」と指摘

 6月末に正式リリースされたフリー・ソフトウェア・ライセンス規約「GPLv3(General Public License Version 3)」を問題視する声がLinuxカーネルの管理者から上がっている。彼らは、GPLv3の下でLinuxカーネルを変更する際はカーネルの所有権者全員から許可を得る必要があるとしており、同ライセンスはLinuxには適していないと主張している。

 Linux Kernel SCSI MaintainershipのゲートキーパーとしてLinuxカーネルのディスク・ストレージ・アクセス部分を管理しているジェームズ・ボトムリー氏は、GPLv3への移行がLinuxカーネルの変更作業に及ぼす影響を危惧している1人だ。

 米国スティールアイ・テクノロジーのCTO(最高技術責任者)で、非営利団体Linux Foundationの理事会メンバーでもあるボトムリー氏は、「GPLv3の下でLinuxカーネルを変更するときは、カーネルの所有権者全員から再ライセンスの承認を得なければならない。これは、著作権法で定められた手続きだ」と語る。

 ボトムリー氏によると、Linuxカーネルの所有権は、特定の個人ではなく、パッチを提供したすべての人々が有しており、その数は現時点で3,500人から1万人程度になるという。「Linuxカーネル管理者がGPLv3に移行しようとすると、実務上のさまざまな問題に直面するだろう。まずはLinuxカーネルの所有権者をすべて見つけ出さなければならない」(同氏)

 そのためボトムリー氏は、「GPLv3に大きな利点が見いだせなければ、わざわざ移行する必要はない」とアドバイスしている。

 また同氏によると、これまでLinuxで使われてきたGPLv2と新しいGPLv3には、ライセンス上の互換性がないという。ボトムリー氏は当面、LinuxカーネルではGPLv2を使い続けると述べている。

 Linuxカーネル開発者のリーナス・トーバルズ氏も、DRM(Digital Rights Management:デジタル権限管理)に関する条項が大きな負担になるとして、GPLv3への反対を表明している。

 GPLv3の策定元であるフリー・ソフトウェア・ファウンデーション(FSF)は、これまでのところボトムリー氏の批判に答えていない。だが、FSFの代表であるリチャード・ストールマン氏は、GPLv3にはDRMや特許権保護をはじめとするさまざまな改良が加えられていると強調し、フリー・ソフトウェアのライセンスをGPLv3に移行するよう呼びかけている。

 一方、Microsoftは7月5日、自社はGPLv3とは無関係であり、GPLv3に基づく法的な義務を一切負わないとの声明を発表した。その中で同社は次のように述べている。

 「相互運用性に関する当社とNovellの協力関係に基づき、サポート・サービスに関する証明書を当社が配布したことで、GPLv3のライセンスを当社が受け入れたという見解もあるが、このような見解が、契約や知的財産権などの法律に基づいているとは思えない。(中略)また当社は、Novellが将来GPLv3コードの配布を決めた場合でも、GPLに基づくライセンスが必要になるとは考えていない」

(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)

「GPLv3」のページ
http://gplv3.fsf.org/

提供:Computerworld.jp