Pioneer Linux――独自の魅力を引き出すのに失敗した凡庸なディストリビューション

 昨年11月にTechalignよりリリースされたPioneer Linuxは、Kubuntuをベースとしたディストリビューションの1つであり、数種類の有料バージョンおよび1種類の無料バージョンが用意されている。

 今回私がテストしたのは、Kubuntu Edgy 6.10をベースとした最新版のPioneer Linux Basic Release 2(R2)である。そしてPioneerに対する私の最終的な評価だが、外見上のマイナーチェンジといくつかのアプリケーションの追加を除けば、オリジナルのKubuntuに対する極めて凡庸な改変版でしかないという結論に落ち着くことになる。

 Kubuntu同様、Pioneer Linux Basic R2も1枚のライブCD形式で配布されており、ライブ環境でのブートアップ後にオペレーティングシステムをハードドライブにインストールすることができる。一番最初に表示されるブート画面と壁紙にはPioneerのロゴが彩られているが、その他の画面に関しては、グラフィカル表示時のスプラッシュ画面からインストールスクリプトに至るまで、Kubuntuのアートワークがそのまま使い回されている。

 実際、PioneerでKubuntu Edgyからそのまま流用されているのは、Linuxカーネル2.6.17およびKDE 3.5.4を始め、ワードプロセッシング用のOpenOffice.org 2.0.4、ネットワーク経由によるWindows系マシンとのファイル共有用のSamba 3.0.22、マルチメディア再生用のAmarok 1.4.3およびXine 1.1.2、CD/DVDオーサリング用のK3b 0.12.17、その他各種のアプリケーションという有り様である。

 同梱されているアプリケーション、パッケージの構成、ルック&フィールがオリジナルのKubuntuからほとんど変わっていないのに、あえてPioneerを選ぶべき理由は何なのだろうか? ユーザを惹きつける魅力があるとすれば、それは独自に追加されたいくつかのアプリケーションという説明になるのかもしれない。

 例えば多くのKubuntuユーザが待望しているソフトといえばFirefoxブラウザが筆頭に挙げられるだろうが、Pioneerであれば最初から同梱されているし、同じくKubuntuには含まれていない電子メールクライアントのThunderbirdも用意されている。またPioneerにはGNOMEライブラリv2.6.18が含まれているので、GNOME系アプリケーションのインストールに伴うオーバーヘッドが削減され、Gaimインスタントメッセンジャーも実行できるようになっている。

 その他にPioneerのメリットとして最前面に打ち出されているのがAutomatix2スクリプトの装備であり、これはマルチメディアコンテンツや特定アプリケーションの実行に必要なプラグインやコーデックをインストールするためのユーティリティだ。具体的には、IRCクライアントのX-Chat、BitTorrentクライアントのBitTornadoおよびAzureus、マルチメディア系プレーヤのRealPlayerおよびVLC、Adobe PDF Reader、Google Earth、DTP用のScribus、RSSリーダのLiferea、WebブラウザのOperaなどに対応している。ところがAutomatixでのインストール対象にはFirefoxとThunderbirdも含まれているので、Techalignが独自に行ったこれら両ソフトの同梱化は、さほど重要ではないとの見方もできる。それ以前の話としてAutomatixユーティリティそのものが、Kubuntu、Ubuntu、Mepisでも使用可能なのであり、Automatixの搭載を謳うことにさほどの意味はないはずだ。

Pioneerのデスクトップ画面(クリックで拡大)

 Kubuntuの優れたハードウェア検出機能は、Pioneerでも受け継がれている。私が試した限りでも、デュアルプロセッサ、液晶モニタ、PCカード型ワイヤレスネットワークアダプタ、各種USBドライブ、廉価版USBマウスコンバータ、ATIグラフィックカードというハードウェア群がどれも正常に認識され、適切な設定が施されている。ただし唯一の例外として、ワイドスクリーン型19インチ液晶モニタにおける1440×900の解像度を認識できなかったが、これはKubuntuでも表示に失敗しているモードである。

 このようにPioneerはその母体となったKubuntuからほとんど変更されていないので、Kubuntu用に書き起こされたドキュメント類があれば、大部分がそのまま差し支えなく使えるはずだ。また新規ユーザにとっては、開発チームが頻繁に顔を出しているPioneerフォーラムの掲示板および、タスク指向のハウツー情報が集められたwiki形式のナレッジベースが役に立つだろう。

果たしてKubuntu/Ubuntuに勝るメリットはあるのか?

 Pioneerを使用する場合とKubuntuを使用する場合とで実質的な差異は無いに等しいが、むしろPioneerで独自追加されたアプリケーションについて様々な問題が散見される。まず第一に、Firefoxのナビゲーションツールバーには検索エンジンが何も登録されていない。そのデフォルト設定では、Pioneerフォーラムの掲示板を検索するようになっている。ところが検索バーに表示されるフォーラムのURLが間違っているため、このリンクを用いて検索しようとしても、お馴染みの“Page Not Found”エラーメッセージが表示されて終わるだけだ。もっともMozilla Add-onsのWebサイトにアクセスすれば、必要な検索エンジンを各自で追加することはできる。

 そして第二の不満として、同梱されているAutomatixスクリプトが最新バージョンでないことが挙げられる。そのため仮想化ソフトウェアVirtual Boxなど、いくつかの有用なパッケージを利用することができない。KDEのAdeptパッケージマネージャを使えば、既存Automatixのアップデートないし最新版のダウンロードとインストールをすることはできるが、何故わざわざそのような手間をかけなければならないのか理解に苦しむところだ。

 日常的にLinuxを使っている者、特にUbuntuのユーザにとっては、Automatixなどごく限られたアドオンを追加した程度の改変がKubuntu/Ubuntuを越える魅力となるとは考えがたい。Pioneerの開発陣がその母体としてKubuntuという成熟したディストリビューションを選んだのは正しい判断であったと言えるだろう。ところが残念なことに、Kubuntuは最も人気の高いディストリビューションの1つでもあるのだ。Techalignにとっての不幸は、そうしたオリジナルのKubuntuを越える魅力をPioneer Linuxに与えられなかったことであろう。

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